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Matzにっき


2003-06-07 [長年日記]

_ [OSS]反『オープンソースの定義』原理主義者

しかし、どうして「オープンソース」という単語の定義としてOSDを使うという主張が批判を受けるのか。 その発想の過程に興味がある。 なぜそこまで「オープンソース俺定義」を守りたいのか。

OSD準拠のオープンソースを守ることのメリットについては 八田さんの記事が詳しい。

では、この定義でない似非オープンソースを守ることに意義はあるのか。 批判する動機はなんなのか。

  • どこかで聞いたオープンソースという言葉の語感から捏造した俺定義を使い続けたい。
  • あるいは自分が誤解していたと認めたくない。
  • オープンソースという単語から自由の意味合いを取り除きたい。 他人の自由はうとましい。
  • いや、そんなことはどうでもよい。 他の人の記述を批判する態度が気に入らないから批判する。
  • その他。

「他人の自由」そのものに反発する人ってのはそんなにいないと信じたいので、 スラッシュドットにそんな意図の人はいなかったと希望的に仮定すると、 その反発ってのは表現(だけ)によって引き起こされたのだろうか。

表現にカチンときて反発されたのだとしたら、 オープンソースのメリットなんてどーでもいいってことなのかなあ。

あと、オープンソースはすでに登録商標です。

_ [OSS]戦略を練る

いずれにしても気分が悪かったので、やり方を考え直してみよう。

オープンソース運動の成功は「オープンソース」という単語が正しく用いられるかどうかではない。 もちろん正しく使われるに越したことはないけど。

それよりもむしろ

  • より多くのソフトウェアがオープンソース準拠のライセンスで公開されること
  • より多くの人がオープンソースソフトウェアの開発に関心を持ち、支援すること

が成功といえるだろう。前者は開発者へのアピール、後者はいわゆる中間層へのアピールである。

匿名で意見を述べる人たちは(潜在的には開発者あるいは中間層なのかもしれないけど)、 匿名に隠れている間は、結局無責任なエンドユーザなので説得したり交渉したりする必要はない。

ということは、開発者には

  • オープンソース化によるメリット
  • オープンソース化によるデメリットの無さ

を紹介し、中間層には

  • 「正しい」オープンソースビジネス
  • 「正しい」オープンソース開発者支援

の事例を紹介するべきなのだろうか。

_ [OSS]開発者の不安

オープンソースでない無料ソフトウェアを開発している人々が、 正しいオープンソースにしない理由ってのはなんなんでしょうね。

もちろん、彼らを強制することはできないわけだが、 彼らの抱えている不安と誤解を解消することで、世の中の幸せの総和が増えるかもしれない。

_

ただいまの松江地方は雷が鳴っております。

_ [TV]『学園戦記ムリョウ』

以前、BSで放送していた時には見逃していて、 今回教育チャンネルで再放送しているものは録画しつつ見ている。

黒板がディスプレイ化し、ノートの代わりにノートPCを広げる教室の様子など、 近未来の表現がなかなか芸が細かいし、登場人物の性格が良いところが結構気に入っている。 話の展開ものんびりしつつ、少しずつ謎を深めていく感じで気持ちいい。

でも、録画が削除されちゃった関係で、2週ほど見逃していたら話が少々妙なことになっている。 いや、ストーリーとして宗教を扱うのは日本に限らずあちこちにあるんだけど、 このスタッフならもうちょっと別の流れでもきれいに話を進められたのではなかろうか。 神さまが宇宙人だったってのはいくらなんでも安易すぎ。

苦情を言うほど無粋ではないが、個人的にちょっとがっかりしたのは確か。 でも、そこはおいておいてもまだ面白いのだ。

_ [OSS]RubyライセンスとOSI承認

また聞きなのですが、sourceforge.jpにプロジェクト申請する際に、

RubyライセンスはOSI承認じゃないのですが よろしいでしょうか...

と言われることがあるんだそうです。まあ、至極もっともです。

で、OSI承認の申請をしませんかと勧められました。承認されると OSIのリストに加えていただけるそうなのです。

申請の手順は<URL:http://www.opensource.org/docs/certification_mark.php>にあるそうです。

しかし、Rubyのライセンスは PerlのArtisticライセンスを少々いじってできているので、Artisticが持つ問題と類似の問題を抱えています。 よって、GPLとのデュアルライセンス以外の局面でまともに使えるとは考えていません。

GPLを適用した時点でOSD準拠ですから、 改めてOSI承認を求めて、単体では問題をはらんだライセンスをリストに追加する必要はないと思います。 GPLに抵抗があるだけなら、単純にBSDライセンスにした方が良いと思います。

Rubyのライセンスがあれなのは

  • 開発当初のregex.cがGPLだったのでGPLを適用する必要があった
  • でも、自分が書いたコードについてはより緩くしたかった

という理由ですから、そういう事情のないソフトウェアがRubyライセンスを適用する必然性はほとんどないと思います。 ということで、自分のソフトウェアに安易にRubyライセンスを適用しないように。 また、万が一必要があって適用することがあってもGPLとのデュアルライセンスを選択してくださいね。

なお、Riteでは以下のライセンスを採用するつもりです。 こっちは単体で適用するつもりなので、OSI承認なのかどうか調べないとな。

/*
 * Copyright (C) 2003 Yukihiro "matz" Matsumoto
 *
 * Permission is granted for use, copying, modification, distribution,
 * and distribution of modified versions of this work as long as the
 * above copyright notice is included.
 */

_ [OSS]Rubyライセンス

今書いたことですが、どうせ不可分なら、なひさんのおっしゃるように「Rubyライセンス」でデュアルを指すとしてしまった方が絶対いいですよね。なんでこんなことに気がつかなかったんだろう。 幸い、ライセンスの条文に「GPLまたは以下の条件」と書いてありますから、ますます都合が良いですね。

ということで、みなさんこれからRubyライセンスという時には 「GPLとのデュアルライセンスである」と覚えてくださいね。

まあ、いずれにしても現在積極的にRubyライセンスを利用する必然性はないんですけどね。

あ、白状すると昔は意味があると思ってました。不勉強でしたから。

本日のツッコミ(全14件) [ツッコミを入れる]
_ なひ (2003-06-08 02:01)

「Rubyライセンス」でデュアルを指す、となんとなく思い込んでました。<br>"same term as Ruby"もデュアルのつもりで、これまでいくつかのコードに付けてたんですけど、まずかったかな。。。

_ tf (2003-06-08 02:50)

批判する理由はやはり、<br>・自分が誤解していたと認めたくない。<br>ではないでしょうか。批判してる人って結構「オープンソース自体は良いと思うが」みたいなことを言っているようで、<br>「オープンソース」にそこそこ思い入れはあるみたいです。<br>で、その思い入れの対象が定義とは違うんだよ、と指摘されても素直に受け入れられないんじゃないかと。<br>まあ、目立つものはなんでも気に食わない、という人もいるんでしょうが。

_ ほそのひでとも (2003-06-08 03:24)

個人的には「俺定義」に固執することより、例の議論で、OSDの条項や内容に対するまともな批判がなかったことが気になりました。<br>OSDの条項や内容をきちんと批判できないことが、「俺定義」批判への批判に繋がったのでないかと見ています。自信はないのですが…。

_ Skirnir (2003-06-08 03:26)

・単に手間が大変(今までOSDについて大体知っていたとしても、OSDに従うためにはOSDを「正しく」理解する必要があり、これにもある程度コストがかかると思います。OSDって何?なソフトウェア開発者ならなおさら)。<br>・自分の書いたソースコードを他人に読まれるのが恥ずかしい。<br>・オープンソースにする必然性を感じていない(メリットを感じ取れない)。<br>のいずれかですかね。>オープンソースでない無料ソフトウェアを開発している人々が、正しいオープンソースにしない理由。<br>自分もGPLなソフトを公開していますが、ライセンスを決定するコスト、公開するためのコストはかなりかかったと記憶しています。例えば「オープンソースにしたいソフトAのこの部分のメソッド実装は、会社で業務として組んでいるシステムのメソッド実装にも使ってしまっている。その場合、そのメソッド実装は会社に著作権が帰属してしまうため自分の権限のみでソフトAをオープンソースとして公開するわけにはいかないことになるのであろうか?」等々、いろいろ悩みました。

_ 斎藤ただし (2003-06-08 15:18)

はじめまして。現状のライセンスがデュアルである理由の一つは、GNU的フリーソフトウェアの条件を満たすためでは、と自分は思い込んでました。(http://www.gnu.org/licenses/license-list.ja.html)<br>Riteライセンスのシンプルさは非常に魅力的ですが、他のプロジェクト由来のコードとの関係や、無保証を明示しない点は法的にどうなるのか、などが心配です。

_ まつもと (2003-06-08 22:06)

GNU的フリーソフトウェアの条件を満たす目的もあります。GPL抜きのRubyライセンス単体ではGPLコンパチではありませんから(rmsから指摘メールをもらいました)、あれだけではGPLソフトウェアとリンクできなくなります。<br><br>Riteのライセンスについてですが、<br> *FSFからGPLコンパチのお墨付きを受けている(伝聞ですが)<br> *OSI的にはHistorical Licenseのバリエーションらしい<br> *もともと違うライセンスのコードを混ぜる時には現行RubyのLEGALファイルのようなことが必要。<br> *尾崎弁護士によれば無保証宣言の意味はほとんど無い<br>ということなので、あんまり問題ないんじゃないかと思ってます。<br><br>ま、実際Riteをリリースする前にもう一度考察してみようとは思いますが。

_ 佐川豊秋 (2003-06-09 00:39)

尾崎弁護士ってMorphyOne詐欺事件の首謀者の一人ですよね。たちの悪い冗談ですね。そんな奴の言うことなんてあてになるのですか?

_ まつもと (2003-06-09 12:39)

彼がMorphyOneでなにをしたのかは知りませんが、直接メールをやりとりした範囲内では、私より法律に詳しいのは確かですし、私をだます意図がないことも明らかでした。よって「この件に関しては」彼を疑う必要はないと思います。

_ とみた (2003-06-09 14:48)

「現在積極的にRubyライセンスを利用する必然性はない」ってことは、もし今 Ruby のライセンスを考えたら、どのようなものになるんでしょうか。(Dualじゃない)GPL だけとか、BSD ライセンスとかでしょうか?<br>仮に Ruby が GPL だったとすると、Ruby 上で動作するスクリプトも GPL にしないといけないんですよね…たしか…。

_ Nayuki (2003-06-10 18:43)

RubyインタープリタがGPLで配布されているからといって、Ruby言語で書いたスクリプトをGPLにしないといけないことはありません。

_ とみた (2003-06-11 10:03)

スクリプト言語の実装がGPLであれば、その上でGPLでないスクリプトを動かすことはできません…よね?<br>スクリプト自体はGPL以外で配布することができるかもしれませんけど、そのスクリプトを実行できる言語がGPLのRubyしかないのであれば、配布はできるけど実行できないということになるので、実質GPLにせざるを得ないのではないかと思うのですが…。<br># GPL以外のRuby処理系の出現を待つという手段はあるのかもしれないけど…(^^;

_ まつもと (2003-06-11 11:12)

スクリプトをGPLにしなくてはいけないということはGPL的に自明ではありません。Rubyで書かれたプログラムは処理系と不可分ではない(実行しなくても意味がある)し、単なる入力データと解釈することも十分できます。私はそう考えます。<br><br>権利保持者の私がそう考えるということは、Rubyについてはその懸念は必要ないってことです。また、私がそう考えていないことはRuby's Licenseに明記されています。

_ とみた (2003-06-11 12:21)

あれ、そうだったのですか…。<a href="http://blade.nagaokaut.ac.jp/cgi-bin/scat.rb/ruby/ruby-list/34805">[ruby-list:34805]</a> 辺りを読んで、スクリプトも GPL でないと動作させてはいけないのは明らかなのだと思ってました。<br><br>「スクリプトが単なる入力」という解釈は、ちょっと違和感がありますが、もし Ruby が GPL(だけの)ライセンスになったとしても、「スクリプトは GPL でなくても良い」という例外条項(?)がつくということでしょうか。<br><br>現在のRubyライセンスの記述は知ってますが、この日記を読むとまつもとさんは「Rubyライセンスは不要」と考えているように読めたので、「第三者が作成した Rubyスクリプトにも GPL を強制するようになっても良い」とまつもとさんが考えているのかどうか気になったもので。

_ まつもと (2003-06-11 13:29)

あれはRMSのGPLの解釈ということだと思います。<br>私のGPLの解釈は違うということで。<br><br>でも、こんな面倒なことを解説したくないんで、将来にわたってRubyのライセンスをGPLだけにするという選択肢は考えていません。

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