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Matzにっき


2008年02月14日 [長年日記]

_ デブサミ2日目

昨日が最終セッションで日帰りできず、 明日は別件で前泊が必要だったので、 今日は東京で過ごさざるをえない。

午前中、広尾で教会の用事をすませて昼食を両親と取り、 午後はデブサミへ。

特に見たいと思っているセッションがあるわけではないので 展示を中心に。

Pythonのブースでは、 柴田さんから「『たのしいみんなのPython』にサインしてください」と依頼される。 Guidoのサインの下というのもどうなんだろう。 一部で価値が出るのかもしれない。

ついでに(?)、PHPブースではPHP本にサインする。 フレンドリー。

_ [言語] PythonをDISる。

デブサミ会場で、雑談していると「PythonはDISらないんですか」と柴田さんから。 なんか自虐的じゃない?

とは言うものの、Pythonは基本的に良い言語で、 不満な点はかなり微妙だ。一般人にはどーでもいいような点だと思う。

一応リストを。

  • 式と文の区別が明確。
  • インデントベースだとeRubyのようなテンプレートが難しい
  • ブロックを含む式を持てない。Haskellみたいにブレースを使えば式にできるといいのに
  • reduceがなくなる
  • generator難しい。yieldを書くと戻り値が変化するってのはどうよ
  • list comprehensionが難しい。英語人には人気みたいだけど

list comprehensionはLINQにつながる「イヤらしさ」がある。 「俺の言語を汚すな」って感じ。

[x for x in ary if cond(x)]

ってのはわからないでもないけど、

ary.map{|x|cond(x)}

の方がすっきりしている、と思う。

もっとも、波村さんによると、 このブロックを積み重ねる方法ではJOINが書きにくいというのが LINQ導入の理由だったそうなので(Andersは最後まで抵抗したとか)、 RubyでもJOINへの要求で、そういうようなことにならないとは言えない、かもしれない。

_ Pre New Generation Chronicle:上野康平−−3次元空間を統べる若き天才プログラマー - ITmedia エンタープライズ

−− 大物ハッカーといえば?

Rubyのまつもとゆきひろさん。ハッカー理想像を実践されているところにあこがれます。技術力だけをみれば、まつもとさんより優れた方も多く存在されるかもしれませんが、日本人であそこまで自分の信念を持って行動されるハッカーってなかなかいないんじゃないかなと思いますし、自分でしっかりとしたコミュニティーを運営されていることなどもリスペクトしています。Ruby 1.9で過去の遺産をバシバシ捨てているのは素晴らしいなぁ。ああいう覚悟がC++にあれば、もう少し違っていたでしょうが。

いやあ、ほめられちゃった。 でも、そんなに信念持ってたかな。

それはそれとして、過去の遺産ってのはなかなか難しい問題で、 Rubyでもやっぱり苦しんでいる。 「バシバシ捨てて素晴らしい」っていうよりも、 ちゃんと互換性を維持する能力が足りない、ような気がする。

_ New Generation Chronicle:べにぢょ−−ギークプロトコルの解読を試みるサイバーヤンキー - ITmedia エンタープライズ

えーと...、女性から見てギークに魅力があるって話は 残念ながら他で聞いたことないなあ。 例外中の例外の話、なのかな。

あえて魅力に感じられそうな点といえば

  • 頭良さそう
  • 物知りそう
  • 収入良さそう

くらいかなあ。一方、

  • 自分を大切にしてくれなそう
  • 人間味が薄そう

とかのネガティブ要因もあるし。

まあ、どっちにしても個人に帰属する要因が大きいので、 ギークだからどうこうということは必ずしもないだろう。

根っからのオタクの私だって、結婚して子供までいるわけだし。 弾さんもそうだ。

もっとも、女房子供以外からモテたためしがないのだが。


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