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Matzにっき


2007年10月30日 [長年日記]

_ [OSS] MogileFS

オープンソース分散ファイルシステム。 レプリケーションも自動でやってくれるらしい。

来るべき未来に備えて、あちこちで分散やら並列やら メニーコアやらが話題になっている、のかもしれない。

_ 【IPCM】iPhone,ディズニーランド,スタバの共通点は?──人気ブログ「Life is beautiful」の中島氏が講演:ITpro

共通点は「エクスペリエンス(おもてなし)」だそうだ。

ソフトウェアを比較する時には、つい「なにができるか」という 機能リストによる比較になりがちである。 しかし、産業が成熟してくると機能による差別化というのは 難しくなる。すべてのライバルが大抵の機能を備えてしまうからだ。

同じような機能を持っていても それぞれに違う「使ってどう感じるか」というのは軽視されがちである。 が、これからの「差別化」のためには、 そここそが重要なポイントになる、という話。

自動車とかそんな感じだよね。 もちろん細々とした機能の差(カーナビとかCVTとかバックモニターとか)が 登場することもあるけど、それも今やある特定のメーカー限定ということは ほとんどなくて(例外はマツダのロータリーエンジンくらいか)、 結局は、予算、デザイン、フィーリングなど機能でない部分で 車種が決定される。

プログラミング言語も似ている。

「チューリング完全」の壁がある以上、最終的に出来ることには大差ないんだから、 プログラミングしている時にどう感じるか、ということこそ重要なポイントになる、 んだと思う。これからは。

まあ、ライブラリなどが十分に充実したら、というのが前提だけど。

_ [OSS] 外に出よう,コミュニティへ,研究室の外へ,世界へ---2007年度日本OSS貢献者賞 表彰式より:ITpro

今年のOSS貢献者賞の授賞式。参加しなかったけど。

今年の受賞者は

  • 小山哲志さん
  • 笹田耕一さん
  • 佐藤嘉則さん
  • 松本裕治さん

の4名。今年は私は審査員をおおせつかっていたので、 「身内」である笹田くんを推薦するのは少々抵抗があったのだけど、 開発とコミュニティ貢献の両方をこなしているということで、 他の審査員の賛成多数で決定した。

他の方も順当だと思う。ただ、4名という枠があったので 「与えるべき人に届かない」という問題はある。 「来年以降でお願いしよう」と先送りした人がたくさんいた。

_ [Ruby] String#to_proc

Ruby 1.9にはSymbol#to_procが導入されるけど、 String#to_procはどうだろうか、という話。

こんなコードが書ける。

square = 'x*x'.to_proc;
square(3);
     → 9
square(4);
     → 16

とか

'x y -> x+2*y'.to_proc[2, 3];
     → 8
'y x -> x+2*y'.to_proc[2, 3];
     → 7

とか。面白いなー。標準で取り込むには マジックが強すぎるような気もするけど。

_ AT&T Labs Research - Hancock Project

Cをベースにした文法を持つ、 統一的な構造を持つ大規模なデータを扱うことができるDSL。 要するにデータストリーム操作言語だと考えればいいだろう。

MapReduceにしろ、このHancockにしろ、 やはりストリームという概念は いろいろと使い勝手がよさそうだ。

そういえば大学時代、研究室の先輩が ストリームを主要なデータ構造にした、 その名もStreamという言語を設計していたなあ。

今思えば先見の明があったということか。 まあ、今では研究成果は埋没しているわけだが。


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