«前の日記(2007年03月12日) 最新 次の日記(2007年03月14日)» 編集

Matzにっき


2007年03月13日 [長年日記]

_ ICPC講演

ACMとIBMがスポンサーのプログラミングコンテスト、ICPCの中で、IBM TechTrekというセッションで講演してくれとの依頼を受けた。

正直、英語でということで躊躇していたのだが、 まあ、良い機会だということで参加することに。

とはいうものの、 居並ぶ講演者が私以外IBMのVPクラスの偉いさんばかりとか、 こんなに大勢の前で講演するとか、聞いてなかったんだけど。

まあ、しょうがない。覚悟を決めて話すしかない。 テーマは「How to Design Great Software」。 ソフトウェアの偉大さを決めるのは「何をするか」ではなく、「如何にするか」である ということについて、ユーザビリティをからめて語るという講演。

途中、ちょうど話している真っ最中に、原稿表示用のVAIO Uに

再起動が必要です。

  [後で] [今すぐ]

というポップアップが出て、「後で」をクリックしたつもりなのに いきなり再起動してしまったのには閉口した。 だから、内部構造の良く割らないOSは...。

その間、記憶とスライドに頼りながらしゃべるわけだが、 再起動プロセスが遅い遅い。瞬間が永遠に感じた。

すべての講演終了後、たくさんの人たちが 「写真を撮ってもよいか」、「サインしてくれ」と 話しかけにきてくれた。

きっと厳しい国内予選を勝ち抜いてきた君たちの方が 単に言語デザインにこだわりがあって、かつ運がよかった私だけなんかよりも ずっと賢いと思うよ、とは言えなかったけど、正直内心そう思ってた。

_ [言語] なぜIBMはAlgolを選ばなかったのか

で、そのいろいろと話しかけられた中で、一人の人からもらった質問が上記のようなもの。

なぜって、それを私に聞いてもねえ。Algolって私よりも古いと思うよ。 と、上手には説明できなかったんだけど。

それはそれとして、今の視点から改めて考えてみると、

  • Algolが誕生した瞬間にはFORTRANよりもAlgolが優れていたとは断言できなかった。 Algolは複雑で遅いと思われてたみたいだし。
  • Algolの言語デザインの優位性が明らかになる頃には、IBMはPL/Iを持っていた。 IBMにはPL/Iを捨ててAlgolを選ぶ必然性がなかった。

ってことなんじゃないかな。質問した彼がこのエントリを読むことはないと思うけど。

_ ITmedia +D LifeStyle:2011年7月、地デジを見られない人たちはどうなる

移行は思うように進まず、ギリギリになって想像力に欠けてた人が事態をやっと認識し、 社会問題化、当面アナログ放送が延長される、に一票。

そうでなくても、2011年からは受信機としてのテレビは使わないつもりだけど。 その頃にはネットとDVD*1だけになって、 テレビはDVDの表示部として活用するかな。 NHK受信料も払わなくてよくなるわけだな。

*1  Blu-rayとかHD-DVDとは言わないのミソ

_ [知財] ITmedia News:「著作権保護期間、作家が選べるシステムを」−−延長めぐる議論再び (1/2)

私はおそらく「延長反対派」に分類されるんだろうけど、本音を言えば 有象無象も道連れにするんじゃなくて、自分で選べるようにしていただきたい、 と思ってるので、「延長したい人は自分の作品だけ延長すれば」派である。 ぜひとも実現しないものか。

それはそれとして、

(著作権切れは)身を切られるようだ、と言う人もいるが、その人が書いた『宇宙戦艦ヤマト』は、吉田満の『戦艦大和ノ最期』にインスパイヤされたなかったのか、『銀河鉄道999』は、宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』にインセンティブされなかったのか

もっと言ってやって。


«前の日記(2007年03月12日) 最新 次の日記(2007年03月14日)» 編集