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Matzにっき


2005年08月30日 [長年日記]

_ [言語] Beyond CL?

Paul Grahamが「新しいLisp」を作るのは大変だと語った話。

You don't have to be independently wealthy to make a new language. Larry Wall and Guido van Rossum and Matz weren't.
(「『新しいLisp』を作る人がたくさんいないのは 皆がPaul Grahamほど金持ちではないからだ」というコメントに対して) 新しい言語を作るために金持ちである必要はない。 Larry WallもGuido van RossumもMatzも金持ちじゃない。
The advantage they had over us in the Lisp world was that they started from a lower point. Larry Wall, for example, started out trying to make a better awk. That's not hard. Awk is missing a lot. Whereas we in the Lisp world are bumpimg up against the asymptote. Among other things, we can't avail ourselves of the one of the richest sources of features for new languages: taking stuff from Lisp. We have to invent genuinely new things. Things, moreover, that people like John McCarthy, Gerry Sussman, and Guy Steele didn't think of. That's not so easy.

彼らが新しい言語を作るのに成功したのは、「低いところ」から始めたせいだ。 たとえば、Larry Wallは「より良いawk」を作ろうとした。それはそんなに難しくない。 Awkには欠けたところがたくさんあるから。 ところが我々には新言語を作るときに使える一番上手い手が使えない。 それはLispから機能をとってくることだから。我々が 新しい言語を作ろうとしたら、まったく新しいものを発明しなくちゃならない。 John McCarthyやGerry SussmanやGuy Steeleが思い付かなかったようなものを。

それは簡単じゃない。

金持ちじゃなくて悪かったな(笑)。たしかにPaulの百分の一くらいしか資産はなさそうだ(泣)。

それは、ともかく、Lispは確かに機能の宝庫で、Rubyもたくさんのものを頂いた。 「Rubyの良さ」の多くはLispのおかげである。それは事実だ。

だけれど、世の中には「Lispが持ってないもの」もいっぱいあるはずなんだな。 それが見えないってのは、ある意味幸せなことかもしれない。

でも、言語デザイナーとしてのPaul Grahamの限界も意味してそうだ。


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