寒いと思ったら雪が積もっている。インフルエンザもはやっているらしく、 次女と長男のクラスは学級閉鎖。長女はちょっと不満げな顔で登校。 もっとも自宅に残った子らも外出禁止なのでうれしいわけではない。 まあ、流行拡大を避けるためには当然の処置であろう。
しかし、考えてみれば社会人は風邪引いても仕事休めなかったりするわけで、 企業でのインフルエンザ拡大とかは現実的な脅威だったりしないんだろうか (うちの会社の連中は(よっぽど仕事が煮詰まってない限り)ちゃんと休みます)。
昨日、本屋に立ち寄ったら目に止まった。
恩師(中田育男先生)が監修していらっしゃるし、
価格も手ごろだったのでレジへ。
と思ったら、財布にお札が一枚も入ってなくて、あわててカードで購入。
教え子としては朝倉書店の『コンパイラの構成と最適化』も購入すべきなんだろうけど、ちょっとお財布にやさしくなくて(実は脳にもやさしくない)。
で、今日になって雪降る午前中に読んでみたら、なかなかよろしい。
文系出身で法政大学の大学院、IT Professional Courseに入学した著者は、
中田先生の「コンパイラはコンピュータサイエンスの基礎である」という言葉に
だまされて惹かれてコンパイラをテーマに選び、
とうとう1年で携帯電話で動く小さなコンパイラを作り上げるところまで到達したという。
本書はその彼女が文系の視点でコンパイラの本を書き上げたのだそうだ。
1章は「たとえ」をつかってソフトウェアの働きについて解説しているのだが、 これはまさに私が書きたかったアプローチだ。某出版社から企画を通すところまで行ったのだが、 時間が取れずとても書けなかったので私の方からキャンセル。残念だ。
2章以降はJVM上で動作するCell言語のコンパイラとインタプリタ(VM)を作っている。 これも(別の本で)書きたかったテーマだ。 Rubyは元々書籍の解説用言語としてプロジェクトが始まったことを知っている人はもはや少ないが、 『(言語を)作りながら学ぶオブジェクト指向プログラミング』というような本になるはずだったのだ。 あまりにも売れそうにないので早々にキャンセルされたんだけど。
というわけで、「まつもとに(才能が足りなくて)書けなかった本」の片鱗がここにある、ということで。 言語に興味のある人は眺めてみて損はない本だと思う。他の中田先生の本よりもずっとやさしいし。
また、えーっというような判決が出た。この特許の内容は
「アイコンの機能説明をさせる第1のアイコン」をクリックしてから第2のアイコンをクリックすると、第2のアイコンの機能説明をしてくれる処理
である。
こんなの誰でも思いつくんじゃない? こんなアイディアを本当に保護する必要があるわけ?
更に、こんなのに対して「製造・販売の中止と製品の廃棄を命じる判決」というのは、ちょっと。
ジャストシステムには、ぜひとも高裁まで争って逆転していただきたい。 また、私は当面、松下(Panasonic)の製品を買いません。 長らくLet's Noteユーザでしたが、今はIBMだし。
しかし、私の懸念はこれだけではない。松下がこのような「特許闘争」を行う企業体質だとすると、 いつの日か彼らの持つ特許2945753号、2982752号、2982753号を「行使」して、 日本を大混乱に陥れないとは限らないということだ。
いや、待てよ。
それで特許の「問題」がクローズアップされればむしろ望むところなのか?
だとすれば「Matzにっき」は松下電器産業を(普通とは違う意味で)応援します。
追記
いくらなんでも「応援する」は不謹慎だと思うようになった。 訂正したい。
煮詰まる?行き詰まる?
「煮詰まる」って言いませんか?<br>私の周辺だけで使う言葉なのかな。<br>「行き詰まる」に近いんですが、「うまくいかなくて鬱々とする」というようなニュアンスが加わっているような気がします。
誤用が広まってしまったパターンですね。以下参照。<br><br>雑想記:“煮詰まる”の意味は? http://www2.odn.ne.jp/k_place/essay/feel/nitsumaru.html
そのニュアンスだと意味は反対になります。<br>煮詰まる=きちんとまとまる(完成する)という意味なので
「煮詰まる」って言います。私の場合は、考えすぎて脳みそが煮詰まったような気分のときに使って、しかも良い考えは浮かんでいないというニュアンスを含んでいます。用法としては「仕事で煮詰まる」かな。<br>でも、辞書に載っている意味は「十分に議論・相談などをして、結論が出る状態になる」ですので「仕事が煮詰まる」といえばmatzさんの場合は「仕様が固まってきた」という意味に取られるかもしれません。
誤用ですか。勉強になりました。> 堀さん、らふぃさん
特許侵害支持か<br>堕ちたもんだなジャストシステムもMatsも
あなたの行った「ツッコミを入れる」という行為も厳密には松下の特許を侵害していますが、なにか。> fleaさん
「ツッコミを入れる」という行為がどのように特許を侵害しているのかわからないので教えてもらえませんか?<br>あと、この特許の出願は1989年で、当時の水準を考えれば十分新規性があったと思うのですがいかがでしょうか。当時といえばまだWindows 3.0すらでておらず、一太郎はDOS上のバージョン3だったと記憶しています。
特許2945753号です。HTML FORMに相当するものは軒並みアウトです。私が間違ってなければ。そして個人的には間違いであってほしいです。<br><br>今回報道された特許の新規性については、当時新規性があったかどうかそのものが争点ですから、私が安易にコメントすることはしません。しかし、新規性があろうとなかろうと「アイコン」を「?」という文字にしただけで成立しなかったりする「特許」を誰かが独占的に保持することが産業振興に利するとは私にはとても思えません。もともと私はインタフェースに対する特許にとても批判的な立場ですし。
今月、中田先生の最終講義があるそうです。<br>「コンパイラとつきあって40年」<br>日時: 2005年2月25日(金) 16時30分より<br>場所: 法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー26階 スカイホール
煮詰まるの誤用の増加は煮物を家庭でつくらなくなった<br>割合とシンクロしているらしいですね。(直接的な関係は無いんでしょうが)<br>「煮詰まってきたね」というのがもうそろそろできあがりだー。と<br>子供の頃は喜んだものですが。
1989年といえば、NeSTSTEPがすでに存在するような年ですね(あれはオーパーツですか?)。<br><br>煮詰まるの意味ですが、手元の辞書(新辞林)には<br>「新たな展開の可能性が見られなくなる」とありました。<br>過ぎたるは及ばざるがごとしで両端の意味があるのでは?
x NeSTSTEP => NeXTSTEP
IBMもSumも自社ライセンスをオープンソース化している話題があるのに松下としてはイメージダウンにならないのかな?<br>やっぱり、クロスライセンスか過去の特許料が目当てでしょうね…
細かいことですが、行為自体は特許侵害にならないのでは。<br>この場合、侵害になるのはソフトウェア(tdiary)ですよね?
行為自体が特許侵害にあたるかどうかはともかく(日本ではどうでしたっけ。アメリカでは当たる場合があるそうですが)、日本の特許は「業としての実施」しかカバーしないので、fleaさんがツッコミを仕事にしているのでない限り「行為によって特許侵害が発生した」と表現すべきでしたね。
NIKKEI NET : 「一太郎」「花子」に特許侵害、ジャスト側は控訴の方針<br>http://www.nikkei.co.jp/news/main/im20050201SSXKC060801022005.html<br><br>によると、<br><br>>高部裁判長は「問題のボタンは、特許明細<br>>書上の『アイコン』に該当する」と判断。<br>>「パソコンに両ソフトをインストールする<br>>行為は、松下の特許権を侵害する」と認め<br>>た。<br><br>ということらしいです。<br>「インストールさせる」ではなく「インストールする」となっているということは、ジャストシステムだけではなく、一般のユーザーにも特許侵害の責任が及ぶ………なんてことだったりするんでしょうか?
申請時には新規性があったのかどうかコメントもしないのに、現在の結果だけみて批判するのはいかがなものかと。<br>それに、技術特許権を行使することは批判されるいわれはないかと思います。<br>独占しているわけではなく、使用料を要求していたわけですし。<br>発明で特許権を獲得し、それを行使することが産業振興に利さない理由も理解できません。<br>そのような社会の産業が結果的にどうなったかは共産国家の崩壊を考えればすぐわかるでしょうに。
「インターフェースに関する特許」はやっぱ有害以外の何物でもないんじゃないでしょうか。頑張って考えた人は報われるべきだとも思うんですけど、一時期、コンビニごとにおにぎりの開け方が違ってむかついたので(笑)
>産業振興に利するとは<br><br>松下電器には産業報国の精神というものがあるはずです。<br>毎朝朝会でとなえているはず。<br>でも実際におこなっている事が、自社の利益だけを追っているということがこれではっきりしました。
ぼーさんへ<br><br>当時の新規性についてコメントしなかったのは、新規性があってもなくても私の結論は変わらないからです。<br><br>仮に新規性が無かったとしたら、この特許は無効です。<br>新規性があったとしても、昨年8月の判決で松下が敗訴し、かつ控訴しなかったことから、問題の特許のうち「第一のクリック後、第二のクリックを行った領域に応じたヘルプが表示される」部分には新規性はなく、「アイコンを使うかどうか」に限られることになります。<br><br>さて、日本の特許法では特許に値する発明とは「自然法則を応用したもののうち高度なもの」です。特許の教科書には「商品の陳列方法などは新規性があっても特許に値する発明としない」というようなことが記述されています。自然法則を応用していないとみなされるからです(アメリカ特許にはこのような制限はありません)。<br><br>あるソフトウェア機能の文字で表示されている部分を「アイコン」に変更することに、たとえ当時新規性があったとしても、それは「自然法則を応用している」とは言えず、この特許は無効であると考えます。<br><br>ですから、私は<br><br> 別のソフトだが同じ機能を巡った裁判で、松下電器に勝訴しており、松下電<br> 器は控訴していない。その時とヘルプの表示で異なるのは、ヘルプを示す記<br> 号に、マウスのイラストを加えた点だけ。なぜそれだけで特許権侵害になる<br> のか分からない<br><br>というジャストシステム内藤理事の発言を支持します。<br><br> http://itpro.nikkeibp.co.jp/free/NC/NEWS/20050201/155579/<br><br>もちろん一番問題なのはこんな特許を認めてしまった日本の特許制度だと思いますが、認められたからといってこの種のソフトウェア特許を「乱用」する松下には強い反発を覚えます。<br>真似したわけでも盗んだわけでもないアイディア(しかも単に表示方法の些細な点)が「特許であるという理由」で、発売の差し止め、在庫の廃棄を求めることが正当だとは私にはとても思えませんし(いや、残念なことに特許法は認めてるんですが、道義的に)、そのようなことが頻発する可能性は技術開発意欲を大いに削ぐと思います。<br><br>> そのような社会の産業が結果的にどうなったかは共産国家の崩壊を考えれば<br>> すぐわかるでしょうに。<br><br>「そのような社会の産業」というのがよくわかりません。私には「共産国家はアンチパテント主義で、それが原因で崩壊した」という風に読めますが、そういうことですか。だとすると、それは初耳なのですが。<br><br>---<br><br>先程の内藤理事の言葉だが、続く<br><br> 松下電器の特許は、ワープロ専用機に対して出願したもの。パソコン用ソフ<br> トに、専用機の特許が適用されるのは認められない<br><br>の部分は同意できません。クレームにワープロ専用機とは書いてない以上、この主張は認められないと思います。口が滑っちゃったのかな。
でも<br>>こんなの誰でも思いつくんじゃない?こんなアイディアを本当に保護する必要があるわけ?<br>は取り下げないわけね。
もひとつ。<br>>ソフトウェア特許を「乱用」<br>乱用してます?私には、同じ特許に関する件で同じ会社を2回訴えた、だけのことと見えますが。
>松下はスキではないが さんへ<br>まつもと さんは裁判の回数のことを言っているのではないと思いますよ。<br><br>ここの「つっこみ」に書き込んでいらっしゃる方々は、<br>単純に、今回の判決が引き起こすジャストシステム様への影響と<br>それに伴う他の特許裁判への影響を語られているようですし。<br><br>私はソフトウェア業界でもなく、特許にも詳しくないですが、<br>今回の判決が出されるまでの過程を追う事で<br>今後想定される私の携わっている業界での、<br>特許への取り組み方が模索できる情報を得られれば。と考え、<br>今後の展開をチェキ!してゆきます。
あまりにboronの負荷が高いので、勝手ながらtdiary.confのshow_refererをfalseにしました。
法律上の話なら「権利の濫用」って単語を使います。ただ、普通はこういう場合には権利濫用の話にはなりにくいです。
私は松下の行為は現行法では合法だと思ってます。<br>合法だが道義に反すると思って抗議してるわけです。<br>ほんとに抗議したいのは特許庁と裁判長だけど、どうやって声を届けたものだか。
弱小のジャストをたたいて特許を認めさせた後に、他社<br>にも同様の裁判をおこすであろう松下のしたたかさが許<br>せませんね。どうせなら最初からソニーあたりに特許侵<br>害を訴えてごらん!
>新規性があったとしても、昨年8月の判決で松下が敗訴し、かつ控訴しなかったことから、問題の特許のうち「第一のクリック後、第二のクリックを行った領域に応じたヘルプが表示される」部分には新規性はなく、「アイコンを使うかどうか」に限られることになります。<br><br><br>横から失礼します。おそらく昨年8月の判決とは<br><br>http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/Listview01/BD8ABD057306E75449256F6900327386/?OpenDocument<br><br>だと思うのですが、この判決文には「特許無効」の示唆はないように(私の目には)見えます。<br>すいませんが、どこで裁判所が特許無効を説示しているか教えて下さい。
どこで、と言われても。そんなこと言ってませんから。<br><br>8月の判決で「一太郎Home」が特許侵害にならなかったことから、「第一のクリック後、第二のクリックを行った領域に応じたヘルプが表示される」機能そのものはこの特許の新規性ではないと判定されたことになります。事実、今回の判決も「アイコンを使っているから」侵害とみなされていますし。<br><br>個人的には「アイコンを使うかどうかだけが新規性となる特許」は特許としての価値がないと思っていますが、それは別の話で、これは今後の特許無効審判(あるとすれば)に期待するとしましょう。
特開2000-217167なんかも、活用されると結構楽しいことになるわけですが・・・。<br>SがP並の行動を取らないことを祈りましょう。
日本語とは思えないクレームを読むと、Webインタフェースを持つ家電をカバーしようとしているように思えますね。もっとも、さすがに2000年の時点でこれに進歩性があるとは言えないと思うので、この特許は成立しないんじゃないでしょうか。仮に成立しても、請求項にIEEE1394と明示的に指定してあったりしますし、あまり恐くないかも。
Matzさん、お久しぶりです。とはいえ、私が存じているのは「まつもと」さんの頃でしたが。以前とは論調or口調が変わられたような?<br><br>この件、あちこちで話題ですね。私もここで持ち出しました。↓<br>http://www.atmarkit.co.jp/bbs/phpBB/viewtopic.php?mode=viewtopic&topic=18701&forum=18&start=0<br><br>専門家な方々のサイトへのリンクがあって、非常に勉強になりました。
じったさん、おひさしぶり。<br>論調や口調が変わったのではなく、「本性」が現れたんでしょう、きっと。私は「まつもと」や「Matz」を名乗ったのはどちらも1989年頃からですし。<br><br>掲示板の方は見せてもらいます。情報ありがとうございました。