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Matzにっき


2004-07-24 [長年日記]

_ [Ruby]Rubyプログラムを高速に実行するための処理系の開発

笹田くんのYARV(Yet Another Ruby VM)が未踏ユースに通ったと言う報告を受ける。

めでたい。これでRiteの実行系は任せることができるかもしれない。 楽できる。というか、モノをつくり出す能力が減退しているので、 笹田くんのような若い力はありがたい。

未踏ユース公募結果を見ると、 「Ruby.NET コンパイラの開発」なんてのが見受けられる。 面白そうだけど、実用的なのができるかなあ。これも見守ることにしよう。

「日本語プログラミング言語の開発」のようなのもあって、 面白そうだけど、既存のものと一線を画すようなものが作れるだろうか。

「ユース」だからいいのか。

_ [家族]親子活動

長女の親子活動。ドッジボールと宝探し。ひさびさに体を動かしたなあ。

めずらしく、娘の所属するグループが優勝した。いっつも負けちゃってたから。

_ [家族]図書館

2週間前に借りた本を返しに、松江市立図書館へ。 そのまま、県立図書館に行ってみる。

  • 確かに市立図書館よりは大きそうだ。本の数も多いかも。
  • でも圧倒的に差があるというわけでもない
  • 検索システムは市立図書館の方ができが良い。
  • 子供の本の並べ方が市立図書館の方がわかりやすい

まあ、田舎の図書館だから。

そういえば、米子には昔「JC図書館」という小さな図書館があって(今でもあるのか)、 私が子供のころには愛用していた。小さいから蔵書は少ないんだけど、 子供向けSFが充実していて、毎日のように読んでいたっけか。

_ [OSS]BSDライセンス

最初に断っておくが、私は「迷ったらGPL」と言っているが、別にGPL至上主義でもなんでもない。 実際に、RubyはGPLソフトウェアではない。

そんな私からBSDライセンスを見ると、すばらしい点が多いと思う。短いので全文引用する

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要するに「私が書いたということだけ明記してくれれば、後はなにをしても構いません」というニュアンスだ。 「私が書いたもので私だけ利益を独占するのではなく、全人類の資産として活用してほしい」と解釈してもよいのではないだろうか。しれは高尚な精神であり、尊敬に値する。

しかし、高尚な態度には時としてコストが伴う。それがたとえばGPLコードをBSDライセンスのコードに取り込めない点だ。しかし、他人の「所有物」の権利を勝手に取り去ることはできないから当たり前のことだ。 「私には高尚な理想があるから」というのは理由にならない。

だから、BSDライセンス・ラブの人がやるべきことは、 「GPLには(私に都合の良い)自由がない」と文句つけることではなく、 「我々の高尚な理想に君も賛同しよう」と啓蒙することではないか。

確かにGPLにすると、 たまに「BSDライセンスソフトウェアに取り込めないからライセンスを緩めてくれ」というメールをもらってうっとうしいというデメリットがある。 しかし、いやなら黙殺すればよいことで、 BSDライセンスを選択してGPLソフトウェアを取り込めないというデメリットとは比較しようがない。

幸いにしてほとんどオープンソースライセンスはGPLコンパチなので、 BSDライセンスをはじめとしてGPLコンパチのオープンソースライセンスは多いので、 GPLソフトウェアに対してソースコードを取り込むことに対する制限は(逆の場合よりも)少ない。

どのライセンスにしたらよいか迷うような、ライセンスについてあまり難しいことを考えたくない人は、 とりあえず実利的な点からも、GPLを選択しておいた方が良いと思う。

もちろん、BSDの高尚な理想に賛同して、人類全体により積極的に貢献したい人は、 (そのコストを理解しつつ)BSDライセンス(または類似物)を使ってほしい。

追記:

通りすがりさんのツッコミ

あのー、ほとんどのオープンソースライセンスはGPLコンパチってのはいくら何でも強弁が過ぎてるのではないですか?

確かに。「ほとんど」はあまりにも軽率な物言いでしたね。訂正します。

本日のツッコミ(全12件) [ツッコミを入れる]
_ 通りすがり (2004-07-26 00:04)

あのー、ほとんどのオープンソースライセンスはGPLコンパチってのはいくら何でも強弁が過ぎてるのではないですか?<br><br>FSFのフリーソフトウェアライセンスの一覧を見ても、GPL互換のフリーソフトウェアライセンスは27個、GPL非互換のフリーソフトウェアライセンスは32個です。対象をオープンソースに広げるとOriginal Artistic LicenseやApple Public Source License 1.xなども含まれるので、GPL非互換ライセンスの数はさらに増えます。<br><br>他にもSF.netのSoftware Mapやfreshmeat.netをBrowse by Licenseで見ると、登録されているプロジェクト及びソフトウェアのライセンスの種類および数がどうなっているか見ることができます。<br><br>実際のところ、Javaの世界ではASFのJakarta Projectが強い影響力を持っているので、Apache Licenseを採用するプロジェクトも少なくなかったりします。失礼ながら現実を意図的に曲解する前に上記のリソースを当たってから文章を書いた方がよろしいかと思います。

_ ゆん (2004-07-26 00:43)

BSDでリリースしたコードに、後からGPLのコードを取り入れたくなったら、それをした上で改めてGPLでリリースし直せばいいだけではないでしょうか? 「GPLコードをBSDライセンスのコードに取り込めない点」を問題にするなら「とりあえずGPL」と同じくらい「とりあえずBSD」でも問題はないような気がします。

_ 通りすがり (2004-07-26 02:19)

http://diary.imou.to/~AoiMoe/2004.07/late.html#2004.07.25_s02<br><br>何を言ってるんでしょうこの人は。matzさんは「BSDライセンスは崇高な精神から生まれた」とは一言も言っていないのだが。ただmatzさんがBSDライセンスに崇高な精神を感じているだけの話で。<br><br>あるいは<br><br>> だから、BSDライセンス・ラブの人がやるべきことは、「GPLには(私に都合の良い)自由がない」<br>> と文句つけることではなく、「我々の高尚な理想に君も賛同しよう」と啓蒙することではないか。<br><br>の部分でカチンと来たのだろうか?実利を取るというスタンスなら勝手にそうすればと思いますが、matzさんが言うところの崇高な精神を見出してそれに賛同するという立場の人間だっているだろうし、そもそも元々の話題は「真のオープンソース」なので結局理念の話になるんだけどね。<br><br>あと、「崇高な精神の旗印の元では何をやってもよいという口実を与えるものである」なんてくだりは言いがかりに等しい。話を意図的に曲解するのはみっともないよね。

_ 通りすがり (2004-07-26 02:46)

補足。言いがかりに等しいと書いたアレだけど、「崇高な精神の旗印の元では何をやってもよい」と考えることは、何かに崇高な精神を感じるということとは独立した問題である。それを勝手にバインドしてそれを元に批判するのは筋違いもいいところ。

_ まつもと (2004-07-26 08:11)

ゆんさん<br><br>>BSDでリリースしたコードに、後からGPLのコードを取り入れたくなったら、<br>>それをした上で改めてGPLでリリースし直せばいいだけではないでしょうか?<br><br>開発を続けているうちにライセンスの変更はだんだん面倒になりま<br>すよね。FSFなどのように「10行以上のコードを貢献する場合には<br>書面で承諾」などのような面倒なプロセスを踏まなければ。<br><br>そんなの「とりあえず」の人に勧められませんよね。

_ AC (2004-07-26 16:17)

OpenBSDの連中だったと思うが、BSDライセンスのせいで協力者リストが凶悪に長くなってるからどうにかならんのか、というのでもめてたようなきが。何だっけ。<br>XFree86のライセンスが変更されて協力者リストを添付しなければいけなくなったので、スピンアウトしてX.orgが出来て*Linuxとか*BSDがX.orgを採用するようになっているという現状からすると、全体を統括してる人にとってはBSDライセンスは面倒なのかなあ、という感じがしてしまうのです。<br>というか、そもそも高尚な人は名前を残そうなどと思わないはずだが、名前を残せることでモチベーションが上がるなら停滞の方が害悪なんだしそれでも別にいいとは思う。<br>参考。<br>http://www.gnu.org/philosophy/bsd.ja.html

_ ひまじん (2004-07-27 12:16)

彼の人の受け取り方もかなり一方的だとは思いますが、彼の人のみならず 1980年代以降のTV文化の洗礼を受けている世代に対して「崇高な精神」なんていう大仰な言葉を、冗談や軽口以外、かつ強度に精神的・倫理的な局面以外で補足説明なしに使っても、まともな意味として取ってもらえない可能性は十分にあると思います。<br>実際に崇高な精神を感じていたとして、もう少し言い方はあるんじゃないかなぁ。<br>じゃあどうすればいいの、と言われても、うまくいえないんで申し訳ないんですけど。

_ 通りすがり (2004-07-27 12:31)

AC氏<br>>AC (2004-07-26 16:17) <br>Matz氏の引用したBSDライセンスは宣伝条項の記述が削除された修正済みBSDライセンスです。よって協力者を追記する必要はありません。<br>混同しやすいですが、最近では単に「BSDライセンス」と言った時にはこの修正済みの方を指すことが多いような気がしますね。

_ まつもと (2004-07-27 13:38)

ひまじんさん:<br>> 1980年代以降のTV文化の洗礼を受けている世代に対して「崇高な<br>> 精神」なんていう大仰な言葉を、...補足説明なしに使っても、<br>> まともな意味として取ってもらえない可能性は十分にあると思い<br>> ます。<br><br>要は私は年寄りであると(苦笑)。<br>なら、お年寄りはもっといたわらないと。<br><br>> 実際に崇高な精神を感じていたとして、もう少し言い方はあるん<br>> じゃないかなぁ。<br><br>すいません、若者に通じる言語センスがなくて。<br>どなたかご教示いただければ参考にします。

_ 誰か (2004-07-28 08:18)

あえて無視しているのかも知れないけれど3項目を省くと(修正BSDライセンス)「俺は責任とらない。勝手にしてくれ。」となるのだよね。そういう意識で使っている人も少なくない。

_ 誰か (2004-07-28 08:20)

あ、すいませんちゃんと読まずに書きました。3項目云々は間違いです。無視してください

_ kazuho (2005-01-05 01:46)

トラックバックさせていただきましたが GPL 等、将来の版に移行できるライセンスについては、注意する必要があると思います。<br>現時点でのライセンス内容に同意するとして、将来の版についても同意できるかどうかは分からないわけですから。

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