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Matzにっき


2004年01月19日 [長年日記]

_ [OSS]「オープンソース・バブルを危惧する」

フリーソフトウェアイニシアティブ 副理事長 鈴木裕信氏こと、ひろのぶさんのインタビュー。

あいからわず難しい言い回しで。超乱暴に要約すると

  • オープンソースはバブルではないか
  • 開発者の環境は改善されていない
  • フリーライダーからの脱却を
  • IPAの単年度主義は問題
  • プロパテントは問題だ

どれももっともだ。

ただし、評論家としては十分な論だが、当事者としては物足りない。 いや、ひろのぶさんにどうこう言うつもりはない。 当事者の事情を話してもITproのほとんどの読者は理解できないだろうし、 あるいはひろのぶさんは話したのに記者が文章にできなかったのかもしれないし。

が、「Matzにっき」なら多少生の話が出ても大丈夫だろう。

「オープンソースがバブルかどうか」は私には関心がないのでパス。

開発者の環境だが、実際のところどうなんだろう。オープンソースがもてはやされているとはいえ、 企業の視点から本当に役に立つ(あるいは投資したい)ソフトウェアはさほど多くはない。 PostgreSQLなどのDBMSは関心をもってもらえるソフトだろうから、 Bruce Momjianなんかはわりと安泰だ(実際はその彼でも大変なんだけど)。

本当に企業が必要とするようなソフトウェアであれば、そのソフトウェアそのものを「人質」にできるので、 まだ希望があると思う。ひろのぶさんが語っていたのは、このレベルだ。 このレベルについては個人的にはわりと希望があると思う。 もちろん、絶えざる啓蒙が必要だとは思うけど。

問題は、そうでないソフトウェアを開発している人だ。 企業の利益には直結しないけれども、必要なもの、 たとえば開発ツールや、フォント、下層のライブラリなどの開発者にまで 企業の関心が届くのはまだまだ時間がかかりそうだ。

これは啓蒙では間に合わない。こういうツールの開発者は、当面副業モデルを選ばざるをえない。 ていうか、いっそ、オープンソース開発者を一手に集めるような企業が出てきて、 優秀な人材を武器に注目を集めるような真似をしないと社会に対するインパクトがないように思う。

だいたい、

オープンソース・ソフトウエアは,大企業の官公庁向けセクションといった,日本で最もコンサバティブな人たちまでがそれを使ってシステムを構築するようになりました。しかし,開発したり,普及活動をしたりしている側からはどうか。社会的に認知されるようになり,責任だけは増えましたが,待遇は良くなっていない。かえってよりプレッシャが増している。

 また多くの場合,オープンソース・ソフトウエアの開発や改良は会社から業務として認められていない。会社から帰って1人で夜中まで開発しているという状況があるわけです。それを「好きだからやっている」の一言で終わらせていいのか。このままでは,日本からの優れたオープンソース・ソフトウエアが増えることは望めません。

なんてことは大きな問題だが、こんな事態になるのは、開発者にも責任がある。

状況が悪ければ声をあげるべきだ。 あるいは転職すべきだ。それを現状に甘んじているから搾取されるんだ。

我々は奴隷ではないっ

万国のオープンソース技術者よ、流動化せよっ。

あと、IPAのアレだが、 スタートアップだけを支援するという意図があるようですな。 まあ、最初が一番大変なので、それはそれで助かるわけだが。 いつまでもお上に甘えられんしなあ。

_ [OSS]オープンソースソフトウェア協会

なるものが出来たのだそうだ。どうしたもんだかなあ。

Webページを見ても、意図も、理念も、信頼性も(まだ)わからない。今後に期待、かな。

_ [家族]家庭の夕べ

月曜の夜は「家庭の夕べ」。最近はわりと安定的に月曜の夜にできている(って、先週は火曜日だな)。

今日は、今年の家族の目標に「挨拶をきちんとする」を追加。親しき中にも礼儀あり。 「おはよう」、「いただきます」、「ごちそうさま」、「いってきます」、「おかえりなさい」、「おやすみなさい」、「ありがとう」 などをきちんと忘れずに言えるように。小さい時にはちゃんとしつけてたのに最近忘れることが多いからな。

活動は「ことわざかるた」。みんな札をとるのに真剣で、ことわざについて聞いちゃいないっていう。 父親が一番真剣なのはいかがなものか。


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