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Matzにっき


2003年10月28日 [長年日記]

_ 具合が悪い

昨日よりはマシ。体の痛みも首と肩だけになった。これは肩凝りか。 いやだなあ、老化するって。

自宅で作業することにする。現行の修正とRubyのバグとり。preview1は出せなかった。

_ [特許]software patent ML

しばらく音沙汰がなかったsoftware patent MLにまたメールが流れるようになった。 松田さんの「現実的な対応」についても理解が浸透してきたようだ。

私も何通かメールを書いたけど、今ふりかえるとなんだかとんちんかんなことも書いている。

現時点での私の考えをまとめると

  • 現時点で無料で有効に使える唯一の武器は 各国におけるソフトウェア特許に対する基準の違いだけのような気がする。
  • アメリカが何でもありなのに対して、日本はソフトウェア特許は合法だがより厳しく、 ヨーロッパは(最近まで?)ソフトウェア特許は成立していなかった。
  • つまり、まずい特許が成立して紛争が発生した(or しそうな)国ではソフトウェアの配布を中止して、 その国以外では(特許による制約が無いので)自由に開発を行うということ。
  • ただし、MP3のような日米欧ぜんぶで成立したような特許からは逃げられない。 でも、もしかしたら、アジアとかアフリカとかで開発できるかも。
  • 逃げられない場合には(いまのところ)期限切れまで待つか、oggのような別手段を開発するしかない。 しかたがない。
  • オープンソースの社会的プレゼンスが向上すれば、 (SCOのような紛争をいくつか経験した後)アンチパテント的圧力が成立するかもしれない。 かなり希望的観測だけど。

これでアメリカで「日本やヨーロッパが活用しているソフトがうちでは使えないのは特許のせいだ」 というケースが数多く見られるようになれば、世間の味方も変わるかも、という考え。 当然アメリカ政府は「うちと同様の基準を導入しろ」との圧力をかけるだろうから、 各国の政治がどう動くかにかかっていることになる。 自分で書いてても甘すぎるような気がするけど、希望ゼロではないと信じたい。

これと、松田さんの提案である「インターネット公知」と「危険な特許データベース」を組み合わせたものが、 オープンソース(フリーソフトウェア)界のできる精一杯かなあ。

追記

「オープンソース(フリーソフトウェア)界のできる精一杯」は正確には 「特許を持たないオープンソース(フリーソフトウェア)開発者のできる精一杯」と した方が良さそうです。


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